幸せを感じるひととき。



幸せを感じるひととき


(かぁわいい顔してー…)

俺の前には、ベッドに突っ伏してすやすやと眠る可愛い可愛い伊吹センセーが居る。

今は二時間目が始まったばかり。
比較的真面目な生徒ばかりのこの学校で僅かながら不真面目な面を持ち合わせている生徒も、まだこの時間ではさすがに保健室へサボりには来ていないようだ。

しん、と静かな保健室に響く蝉の声にもう夏が来たのだと実感する。
外には保健室の備品だろうタオルなどが干され、強い日光の光を浴びながらはためいている。

伊吹センセーの手にはシーツが握られており、半分だけ綺麗にベッドに掛かったままのそれは新しいものを敷いていたのか古いものを代えようと剥いでいたのかは分からないけれど、明らかに仕事の最中に眠ってしまっているにも関わらずひどく気持ち良さそうに眠る伊吹センセーが俺にはとにかく可愛く見えて。

学生の仕事である勉強、授業をサボって伊吹センセーに会いに来ている俺が眠っているのを咎めるのはお門違いだし、第一可愛い顔ですやすやと眠る恋人を起こすなんてとんでもない。

「気持ち良さそうに寝るよね、伊吹センセー…」

学校の狭いベッド。
伊吹センセーが突っ伏しているのとは反対側に腰掛けても、充分に手が届く距離。

俺は上半身をベッドに乗せて肘をつき、その上に顎を乗せた。
伊吹センセーの寝顔が近くにある。

半分だけ開いた唇が可愛い。
ちょっと乱れた前髪が可愛い。
全部全部、可愛い。

思わず伸ばした手で伊吹センセーの頭を撫でれば、ぴくりと動く瞼。

寝顔を見られていた事に気付いて赤くなるセンセーにキスするまで、…あと少し。


End.

→収納:2010.01.04 兎絵

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